法華経の薬草喩品の後半部はかなり長い。『陶工の譬え』など美しく巧みな比喩が数多く説かれている。だが鳩摩羅什訳の『妙法蓮華経』では後半部分の記述が無いのだ。

その為に「鳩摩羅什が恣意的にバッサリとカットした」と思い込んでいる人も多い。

だが仏教学者・植木雅俊氏の見解では、法華経は、原典写本の種類によって、また漢訳の種類によって、その構成に多少の異同が見られる。薬草喩品の後半部は、サンスクリット語のケルン・南条本、『正法華経』や『添品法華経』には記述されているが、『妙法蓮華経』にだけ存在しない。

その韻文からなる偈(詩句)には、他の章の偈や、他の初期大乗仏典の偈で必ず頻繁に見られる仏教混淆梵語が極めて稀にしか見られない。従って、この部分はかなり後世の挿入だと考えられる、という趣意の見解を述べられてる。

つまり鳩摩羅什が翻訳した時代には薬草喩品の後半部は無かった、との見解なのだ。「羅什が独断で後半部分をバッサリとカットした」と断定するのは早計である。今後の文献調査の進展を待つべきだろう。


にほんブログ村 哲学・思想ブログ 創価学会へ
にほんブログ村